投資は「長期」と「短期」に分けられます。(あいだに中期が入る場合もあります)
これはひとえに投資をした資産を持っている期間が「長い」か「短い」かです。
『「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」報告書』より
上記のように、一般的には長期投資のほうが容易で初心者におすすめできるとされることが多いように感じます。
それはいったいなぜなのでしょうか。
この記事ではそんな長期投資のメリットとデメリット、長期投資が向いているのはどのような人なのかについて解説をしていきます!
この記事の内容
長期投資のメリット
リターンが安定する
基本的に投資は長期であるほど安定するとされています。これは「リスクの時間分散効果」といいます。
理屈はかんたんで、株価が下がる期間もあれば、株価が上がる期間もあるためです。
たとえば1年を目安に短期投資をしていると、その年が株価が上がる年だったら大きなリターンを出せるでしょう。
反対に株価が下がる年だったら、損失が大きくなってしまうでしょう。
もちろんそこをうまく立ち回るのが短期投資の本質なのでしょうが、損失を出すリスクは常にはらんでいます。
対して長期投資の場合、ある年に株価が下がって一時的に損失状態になったとしても、そのまま保有を続けると次の年には利益に転じたりします。
そのような上がり下がりを繰り返すと、長期的には安定したリターンへ落ち着くということが言えます。
「リスクの分散効果」は、投資信託など長期投資をする大きな理由のひとつです。
しかし、なかには懐疑的な意見もあります。
リスクをどうとらえるか、などの前提条件によってはリスクの時間分散効果が成立しない場合があるのです。
これは長期投資だからといって、「絶対に利益が出る」といった保証はあり得ないということでもあります。
参考記事 ※研究ノートのため、内容は専門的なものです。
『長期運用とリスクの時間分散効果』みずほ信託銀行 資産運用研究所 菅原 周一
定期的なリターンが得られる
継続した収益が得られるのも長期投資のメリットです。
たとえば「配当金」「株主優待」「金利」などがその代表例です。
これらに共通していることは、保有しているだけで、ある程度定期的に入ってくる収入である点です。
長いあいだ保有する長期投資でこそ、「配当」や「金利」のような収益は安定したものになります。
短期的に売買を繰り返していては、これらの収益を十分に得られない場合があるためです。
余裕が持てる
短期的な売買に比べて、長期投資のほうが余裕をもって取引ができます。
この「余裕をもって」というのには二つの意味があります。
ひとつは「市場の動きを常に見張っている必要がない」という意味で、もうひとつは「判断するまでにじっくりと考えて、分析することができる」という意味です。
順調なら利益はどんどん大きくなる「複利効果」
投資の大原則として、運用する資金が大きいほどリターンも大きくなります。
この原則に基づくと、長期投資では時間の経過とともに投資で得られた利益で運用できる資金が増えていくので、得られるリターンもどんどん大きくなっていきます。
これは「複利効果」と呼ばれます。
長いスパンで比較すると、投資をしなかった場合と比べて非常に大きな利益が出せるということです。
もっともこの「複利効果」は、投資の利益をそのまま投資に回すという前提で成り立つものです。
利益が出たらそれは生活費にまわすといったスタイルの場合は、この効果は得られません。
長期投資のデメリット
「一攫千金」はない
長期投資というのはあくまでも資産を減らさずに、着実な利益を積み重ねていくことを目的としています。 短期的な投資と比べると、短期間に大きな利益を上げることは難しいといえます。
※これは「短期投資 = 一攫千金」ということではなく、あくまでも短期投資がハイリスク・ハイリターンであるという側面に着目しています。
資金を拘束される
投資に充てるお金というのは本来は何か別の用途に使えたはずのお金です。
何らかの資産に投資しているということは、その分のお金を使えない状態になっているという見方もできます。
そして長期投資をするということは、投資に回しているお金を使えない期間が長いということでもあります。
もちろんどうしても必要になったら資産を売却し換金することは可能ですが、投資をすることで「いま使える」お金が限られるということは確かです。
自分でお金を動かしたい人にはつまらない(かも)
長期投資というのは基本的に資産を「持っている」だけの期間が長くなります。
購入・売却のようなアクションを起こすことは稀です。
そのため、世の中の動きに合わせて売買していく投資スタイルを想像していると、長期投資を「つまらない」と感じるかもしれません。
伝説的な投資家 ジョージ・ソロス氏は、 「いい投資というのは退屈なものである。( Good investment is boring. )」 と述べています。
この言葉は必ずしも長期投資について述べたものではないかもしれませんが、投資にギャンブルのような「楽しさ」を求めるのはおすすめできません。
長期投資がオススメな人
以上に長期投資のメリットとデメリットを見てきました。 では具体的にどのような人が長期投資におすすめなのかを考えてみます。
大きなリスクを取りたくない人
長期投資と短期投資を比較すると、長期投資のほうがローリスクローリターン(リスクとリターンがともに小さい)です。 逆に言えば、より安定した利益を見込むことができるということでもあります。 損をするリスクが高いのは嫌だというようであれば、長期的に投資をしていくのがオススメです。
投資に時間や手間をかけられない人
売買を繰り返す短期投資では、どうしても情報収集や意思決定に時間を取られてしまいます。 仕事や勉強があって、投資にはあまり時間を費やしたくない、手間をかけたくないというようであれば、売買の回数が少ない長期投資がオススメできます。
将来のために投資をする人
もしもあなたが短期的に利益を出したいのではなく、長い目で将来に備えるために投資をするというのであれば、長期投資がオススメです。 リスクが抑えられ、長い目で判断がしやすい長期投資は、「将来に備える」というような長期的な目的との相性がいいといえます。
今回の記事では「長期投資」に着目して、メリットやデメリットを紹介しました。
投資においても価値観はさまざまで、「長期投資」が合う人もいれば合わない人もいるかと思います。
ぜったいに正しい方法というのはありませんので、自分の性格や目的に合わないのであれば無理に合わせることはありません。
しかし、資産という重要なものを扱う投資の世界では、やはりリスクが抑えられる長期投資が「王道」であることも確かなのです。