【3/18】金融庁から公式見解。匿名化解除でソーシャルレンディングが大きく変わる?

なぜ「貸付先」が分からなかったのか?

ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)は「投資家」から資金を集め「企業」に貸し付けることで利益を得る「貸金業」に該当します。
貸金業では、消費者金融などから「立場の弱い借り手」を保護するための法律「貸金業法」が適用されます。これによって投資家は「投資先企業」の情報が分からないまま投資判断をしなければなりませんでした。

立場の強い「借り手企業」が保護される矛盾

貸金業法は、立場の弱い「個人」を立場の強い「貸付企業」から守るための法律です。
ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)では「貸し手(個人)」と「借り手(企業)」の「立場の強さ」が逆転しています。にも関わらず立場の強い「借り手企業」の匿名性が守られてしまうという矛盾を抱えていました。

匿名化によって起こった問題

ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)が始まってから現在まで投資家は
資金がどこで使われているのか?
資金がどのように使われているんか?
知るすべがありませんでした。借り手が「匿名化」されているために「投資判断」に必要な情報が得られないまま資金を預けざるを得なかったのです。

貸付業者の相次ぐ不祥事

借り手情報が分からないという「大きな問題」を抱えていたソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)では現在に至るまで「匿名化を利用した不正」が実際に多発しました。行政処分を受けた事業者も複数社に上り、こういった背景から情報の「透明化」を求める声が強く上がりました。

2019/3/18 金融庁から「匿名化解除」へ

この「匿名化問題」に対し遂に金融庁が「匿名化解除」を認める回答を公表しました。
事業者によって対応は異なりますが、今後は今まで不明だった投資先が実名開示されるようになります。

Funds(ファンズ)は全ファンドで情報公開

他社に先駆けて投資家への情報開示に積極的に取り組んできた「Funds(ファンズ)」は今回の「匿名化解除」にもいち早く対応を発表しました。4月以降の取扱い案件については、全案件で貸し付け先の情報を公開する方針です。
詳しくは公式ページをご確認ください。

匿名化解除のメリット

投資判断がしやすくなる

投資先について公開される情報が多くなることで投資先として適格かどうか?の判断がしやすくなります。特に担保や保証についてその内容が具体的に開示されると、今まで不明瞭だったリスクが明確になるためより公正な取引が望めるでしょう。

事業者の不正抑止効果

一部の業者では「匿名化」を逆手にとって事実と異なる「貸付先」に資金を貸し出すケースがありました。当然行政処分等の罰則が与えられましたが、貸付先が「匿名」な状態では、投資家が健全な運営が行われているかチェックすることが出来ませんでした。今回の「匿名化解除」で全てが解決する訳ではありませんが、良い方向に進むことは間違いないでしょう。

匿名化解除にデメリットはあるのでしょうか?

匿名化解除のデメリット

投資案件数の低下

「資金の借り手」が「匿名化解除」によって減ってしまう可能性があります。投資家が借り手を厳しくチェックできるようになるため「資金の集まり」も今までより鈍くなるかもしれません。今まで成立していた案件も不成立になるリスクがあります。

対応の遅れ

「借り手企業」の反発や「実名化による風評被害」など「匿名化解除」に対応しきれない取引業者や投資家に混乱が生じる可能性があります。今後の動きに注意が必要です。

匿名化解除でソーシャルレンディングは更なる成長へ

この「匿名化解除」が転機となり、今後多くの事業者が貸付先の開示を進めていくことが予想されます。しかし単に「情報の透明化」を進めるだけでソーシャルレンディングが成長する訳ではありません。「公開された情報」判断するのは投資家に委ねられます。今回の匿名化解除は、他の金融取引では当たり前に行われていた「投資家保護」がソーシャルレンディングにおいても始まったと言えます。
今まで良いイメージを持っていなかった人も多くいたソーシャルレンディングがようやく変ろうとしています。今後の発展に注目です。